Tokyo Contemporary Art Award

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YAMASHIRO Chikako

1976年沖縄県生まれ

ⓒRyudai Takano

http://ycassociates.co.jp/artists/2019/03/20/218/

活動情報



プロフィール

2002年 沖縄県立芸術大学大学院造形芸術研究科環境造形専攻修了

主な展覧会

  • 2023年個展「山城知佳子 ベラウの花」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、香川)
  • 2022年「JAPAN. BODY_PERFORM_LIVE: Resistance and Resilience in Japanese Contemporary Art」(Padiglione d’Arte Contemporanea、ミラノ)
  • 2022年「鷹野隆大・山城知佳子 二人展『距離の洞窟』」(Yumiko Chiba Associates、東京)
  • 2022年「第17回イスタンブール・ビエンナーレ」
  • 2022年「コレクション1 遠い場所/近い場所」(国立国際美術館、大阪)
  • 2022年「ハワイ・トリエンナーレ2022」(ホノルル)
  • 2021年個展「山城知佳子 リフレーミング」(東京都写真美術館)
  • 2020年彼女たちは歌う」(東京藝術大学 美術館陳列館)
  • 2019年話しているのは誰?現代美術に潜む文学」(国立新美術館、東京)
  • 2018年京都国際舞台芸術祭」展示「土の人」、パフォーマンス《あなたをくぐり抜けて―海底でなびく 土底でひびく あなたのカラダを くぐり抜けて―》(京都芸術センター)
  • 2018年個展「Shapeshifter」(White Rainbow、ロンドン)
  • 2018年あざみ野コンテンポラリー vol.9 今もゆれている」(横浜市民ギャラリーあざみ野)
  • 2018年済州4・3事件70周年祈念 ポスト・トラウマ展」(済州道立美術館、韓国)
  • 2018年Asia Pacific Breweries Foundation Signature Art Prize 2018」(シンガポール美術館)
  • 2017年個展「存在の海」(RENEMIA、沖縄)
  • 2016年From Generation to Generation: Inherited Memory and Contemporary Art」(ユダヤ現代美術館、サンフランシスコ)
  • 2016年SEVEN JAPANESE ROOMS」(Fondazione Carispezia、ラ・スペツィア、イタリア)
  • 2016年個展「創造の発端 -アブダクション/子供-」(Yumiko Chiba Associates viewing room Shinjuku、東京)
  • 2016年あいちトリエンナーレ2016」(旧明治屋栄ビル、名古屋)
  • 2015年第8回アジアパシフィックトリエンナーレ」(クイーンズランド州立美術館 ギャラリーオブモダンアート、ブリスベン、オーストラリア)
  • 2012年East Asia Feminism: FANTasia」(ソウル市立美術館)
  • 2012年アジアをつなぐ-境界を生きる女たち 1984-2012」(福岡アジア美術館、沖縄県立博物館・美術館、栃木県立美術館、三重県立美術館 )
  • 2012年個展「森美術館MAMプロジェクト018:山城知佳子個展」(森美術館、東京)
  • 2010年ニュースナップショット 日本の新進作家展 Vol.9 〔かがやきの瞬間〕」(東京都写真美術館)
  • 2010年恵比寿映像祭 ~歌をさがして~」(東京都写真美術館)

受賞歴

  • 2022年第72回 芸術選奨」文部科学大臣新人賞
  • 2020年第31回 タカシマヤ美術賞」(公益信託タカシマヤ文化基金)
  • 2018年第64回 オーバーハウゼン国際短編映画祭」ゾンタ賞
  • 2018年Asia Pacific Breweries Foundation Signature Art Prize 2018」大賞ノミネート(シンガポール美術館)
  • 2017年Asian Art Award 2017 supported by Warehouse TERRADA」大賞

東アジア地域で取り残された人々の声、体、魂を探りつつ、アイデンティティ、生と死の境界、歴史的記憶の移り変わりのテーマを訴えて来た。生まれ育った沖縄の地理的政治的状況と歴史はアーティストとしての活動に強力なモチベーションと要素を与えた。詩的イメージとストーリーを通じて、被抑圧者の見過ごされ、聞き過ごされた声や肉体、魂を伝え、自然と人間、自己と他者の和解の方法を探ろうと試みて来た。私は写真とビデオを自分の体や他者の体を使う作品のために使用するが、それらはリアリティと想像の世界の境界を曖昧にし、なおかつ複数の意味をイメージと鑑賞者の間に生み出せると信じるからである。ファウンドフッテージの再活用、ボイスパフォーマーの採用、マルチチャンネルのスクリーンの使用など、様々な映像製作の技術を試みながら、映像の潜在性とパフォーマビリティの可能性に挑戦し続けている。

TCAA2020-2022 選考委員長 コメント

第2回目となるTCAA選考は、最終選考に残った6組のアーティストが希望する都内や関西エリアにあるスタジオなどを訪れ、3日間に渡るインタビュー、選考委員同士の論議の結果、藤井光、山城知佳子2名を選出した。いずれの新作構想も、これまでの実践からの転機となる期待を感じさせるものだった。本年はコロナウィルスの流布により複数の選考委員が日本への渡航を見合わせざるを得なかったが、インターネットをつなげて全ての選考プロセスを共有し、踏み込んだ話し合いの場を持つことができた。ネットという通信手段により距離による壁を越え、共有しコミュニケーションを深めることが叶うことを確認できた一方、疾病や災害も含む想定外の状況変化により、容易かった他国間の行き来や体験の共有は簡単に遮断されてしまうことも痛感することとなった。

沖縄の出自を持つアーティストとして、その歴史、現状を自身の身体を媒介に探求し表現を続けてきた山城知佳子は、主題を沖縄以外の土地へと広げている。遍在するトラウマ、痛みの歴史を見つめ、世界を地続きの場所として捉える新たな試みに踏み出している。

神谷幸江(ジャパン・ソサエティー、ニューヨーク ギャラリー・ディレクター)

受賞の理由

パフォーマンスから展開する映像作品は、作家の身体によって主題を内面化した視点から歴史の問題を扱っている独自性の高い表現であると評価された。これまで試してきた身体表現を、よりスケールを広げ作品化する新しい形式を見出したばかりでもあり、今後の展開について国外の美術関係者との交流によってステップアップすることが期待される。さらにこれまで主に出身地である沖縄の問題に言及してきたが、作家本人がそれをより普遍的な問題としてとらえ、沖縄以外のトピックに取り組もうとしているタイミングであることから、本賞が彼女のさらなる展開を後押しするよい機会となるだろう。