Tokyo Contemporary Art Award

TOP > 受賞者紹介 > 呉 夏枝

OH Haji

1976年大阪府生まれ
オーストラリア在住

撮影:木奥惠三

https://hajioh.com/

活動情報

  • 2024年3月7日~4月20日
    「UN / WEAVING: HAJI OH」
    Alison Bradley Projects、ニューヨーク
    詳細はこちら

プロフィール

学歴

2012年 京都市立芸術大学美術研究科博士後期課程研究領域染織修了

主な展覧会

  • 2023年「KANTEN観展: The Limits of History」(Apexart、ニューヨーク)
  • 2022年「六本木クロッシング2022展: 往来オーライ!」(森美術館、東京)
  • 2019年「展示と対話のプログラム アートセンターをひらく 第Ⅱ期」(水戸芸術館現代美術ギャラリー)
  • 2019年個展「手にたくす、糸へたくす」(小山市車屋美術館、栃木)
  • 2018年「東アジア文化都市2018金沢『変容する家』」(金沢市内石引エリア)
  • 2017年「交わるいと『あいだ』をひらく術として」(広島市現代美術館)
    個展「—仮想の島— grandmother island」(MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w、京都)
  • 2016年「朝鮮半島の民衆的工芸 POJAGI as a portrait -呉夏枝の写真作品ともに」(小山市車屋美術館、栃木)
  • 2015年 個展「Wearing Memory」(ウロンゴン大学TEAM Gallery、オーストラリア)
  • 2014年個展「記憶をまとう」(小金井アートスポットシャトー2F、東京)
  • 2013年個展「呉夏枝×青森市所蔵作品展『針々と、たんたんと』」(国際芸術センター青森)
  • 2011年「Inner Voices—内なる声」(金沢21世紀美術館)
  • 2005年「ゾーン ポエティックモーメント」(トーキョーワンダーサイト本郷)

主に、織、染、ほどくなど、繊維素材にまつわる技法を用い、写真、テキスト、音声などを併用したインスタレーション作品を制作。在日韓国人三世の出自を背景に、言葉にされなかった個人の記憶―沈黙の記憶−をめぐる制作や、ワークショップをとおしての対話や経験をもとに、記憶の継承の可能性を探求している。

選考委員による総評

写真や映像といったデジタル・メディアを用いる作家が多かったですが、メディウムの選択や使い方、展示方法には新鮮さや驚きを感じるようなものは残念ながら少なかったです。自身の国籍や属性、ジェンダー・アイデンティティが制作当初の動機でありながら、そこから他の個人や集団の歴史、経験へと接続していこうとする意思が強く反映された作品が多く、作家が制作の過程で関わる人々と時間をかけて丁寧に信頼関係を築いていることに感心しました。マイノリティや移民の問題は、彼らが存在する場所の歴史や地政学に根付く問題ですが、その一方で、世界のあらゆるところにある問題であるとも言えます。マイノリティの問題を日本固有の問題として設定せずに語る方法を探ることで、大局的な問題が顕在化し、より多くの人々と作品を通して問題を共有する可能性が開かれるのではないでしょうか。

高橋瑞木[CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)館長兼チーフキュレーター]

受賞理由

大きな歴史およびそこで掬いきれない個人の小さな物語の両方への等しい眼差しが特徴で、染、織といったテキスタイルの形をとる制作それ自体も地政学、女性史、移民・移住の歴史を表象するものとなっています。物質文化としてのテキスタイルの技法と素材を丹念に研究し、かつ高い技術を備え、それらを表現する題材をコンセプチュアルに用いている点が高く評価されました。また、現在作家が制作している作品群は、個人の生に焦点を当てるのみならず、階級と労働に関する調査を交差させたアプローチであり、歴史だけでなく、ジェンダーや移民、自然環境の問題とも接続可能である潜在性が評価されました。