EXHIBITIONS
展覧会
Tokyo Contemporary Art Award 2024-2026 受賞記念展「湿地」
Tokyo Contemporary Art Award 2024-2026 受賞記念展「湿地」
梅田哲也と呉夏枝は、近年「海路」や「水路」など、水にまつわる考察を作品の重要な要素に取り入れています。仮想の島々をめぐるように個人の歴史や物語をつなぐことで、鑑賞者の記憶に働きかける呉のプロジェクト「grand-mother island project」を中心とした作品構成と、パフォーマンスやツアーなど、さまざまな形態によって物事の構造を可視化する梅田が展示空間に創出する新たな導線が、表裏の関係のように、あるいは水と陸地の境目である湿地のように、時に反転しながら、緩やかに重なり合います。
撮影:シャヒロヤス
「wait this is my favorite part 待ってここ好きなとこなんだ」展示風景(ワタリウム美術館、東京、2023) 撮影:天野祐子
「wait this is my favorite part 待ってここ好きなとこなんだ」展示風景(ワタリウム美術館、東京、2023) 撮影:天野祐子
「梅田哲也イン別府『O 滞』」(別府各所ほか、2020) 撮影:天野祐子
「梅田哲也イン別府『O 滞』」(別府各所ほか、2020) 撮影:天野祐子
撮影:シャヒロヤス
1976年大阪府生まれ、オーストラリア在住。
主に、織、染、ほどくなど、繊維素材にまつわる技法を用い、写真、テキスト、音声などを併用したインスタレーション作品を制作。在日韓国人三世の出自を背景に、言葉にされなかった個人の記憶―沈黙の記憶―をめぐる制作や、ワークショップをとおしての対話や経験をもとに、記憶の継承の可能性を探求している。現在は、日本とオーストラリアを拠点に活動している。
作家コメント
近年取り組んでいる「grand-mother island project」の根幹にあるのは、記憶の継承と、それをめぐる「場」をつくることです。TCAAの海外活動支援を受けて実現したリサーチの旅では、過去の出来事を次世代へとつなごうとする人々、その営み、そしてそれをめぐる息づく記憶にふれることができました。その多様な在り方を、現地での出会いをとおして学ぶ貴重な機会でした。今回の展示では、これまで制作してきた作品群に加え、海女をめぐる対馬や済州島でのリサーチやインタビューをもとに生まれた新作を発表予定です。それは、奇跡のめぐり合わせの断片を紡ぎ合わせるような作業です。また、予見不可能な梅田哲也さんとの空間のコラボレーションでは、その過程をも糧に、鑑賞者の記憶を喚起し、それぞれの物語が交錯する場を浮かび上がらせることを試みます。
《彼女の部屋にとどけられたもの》 2019 撮影:根本 譲 画像提供:水戸芸術館現代美術センター
《海図》 2017-2019 撮影:木暮伸也 画像提供:小山市立車屋美術館
《海鳥たちの庭》 2022「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」展示風景(森美術館、東京) 撮影:木奥惠三 画像提供:森美術館
《記憶をまとう》 2014 撮影:山本 糾
選考委員と出展作家が選考を振り返りながら、本展出展作品や今後の展開について話します。
※入場無料/要事前予約/日英同時通訳、日本手話通訳あり
申込締切日までに、予約フォームよりお申込みください。
本展で梅田が考案した展示プランの原点のひとつである映像作品を上映します。
※入場無料/要事前予約
※上映開始後の入退室はお控えください。
申込締切日までに、予約フォームよりお申込みください。
※日程および出演者は変更となる場合があります。
※その他、各種イベントを開催予定です。詳細は、本ページでご案内します。
作品画像や、作家のテキスト、専門家による寄稿に加え、本展の展示風景画像などを収録した作品集を作家ごとにバイリンガルで発行します(2026年8月発行予定/非売品)。また、発行後、ウェブサイトでの公開のほか、希望者への郵送配布を行う予定です。
詳細は決まり次第、本ページでお知らせします。
2023年6月に公募を行い、選考委員に公募者を含む候補アーティストの推薦を依頼、議論によりノミネート・アーティストを選出。その後、各アーティストの事前調査、オンラインを活用したスタジオ訪問や面接など、対話による選考を経て、2名の受賞者を決定しました。
高橋瑞木 [CHAT 館長兼チーフキュレーター]
野村しのぶ [東京オペラシティアートギャラリー シニア・キュレーター]
ソフィア・ヘルナンデス・チョン・クイ [クンストインスティテュート・メリー ディレクター]
レズリー・マ [メトロポリタン美術館 ミン・チュー・シュウ&ダニエル・シュー アジア・アート部門アソシエイト・キュレーター]
鷲田めるろ [十和田市現代美術館 館長/東京藝術大学大学院 准教授]
近藤由紀 [トーキョーアーツアンドスペース プログラムディレクター]
※肩書きは、選考当時のものです。
特定非営利活動法人アーツイニシアティヴトウキョウ [AIT/エイト]
作家コメント
通常なら公共の美術館ではまともに取り合ってもらえなくてもおかしくないプランですが、周囲の皆さんのサポートのおかげで、実現の一歩手前まで漕ぎ着けることができてしまいました。
表と裏、地と図、ハレとケ──理解のために切り離してきたものが、実は地続きであることをふと自然に思い出せるような現場になればいいなと妄想しています。
胸が沈むニュースが多いけれど、忘れたくないことや忘れてはいけないことを、少しずつ楽しみに変えながらやっていきたいです。